ニューヨークにはセントラルパークがある

R154 10km

photo

3年間着たダウンジャケット。随分よれてきたし色にも飽きてしまったので、着るのは今季限りにして暖かくなったら処分しようと昨年の冬から考えていましたが、今年のニューヨーク、暦は進めどなかなか気温が上がりませんでした。でもここ2週間ほどは日中20度越えの日もあり、夜でも軽いジャケットで充分な程に春らしくなりました。あのダウンジャケットを着ることももうありません。

少し遅れ気味の進行ですが、この季節、様々な種類の花が咲き乱れます。ストリートの花壇や公園の植え込みには黄色や白のスイセンやチュウリップが咲いています。そして街路樹や公園の木々も新芽やつぼみが少しずつ大きくなり爆発寸前です。ニューヨークの街でおなじみの梨科の木には既に白い花が咲いています。セントラルパークでもモクレンや梅や桜などがそろそろ見頃になりそうです。

セントラルパークのループは走る人でにぎわっています。冬の間は夜に走る人はまばらだし、それなりのスピードで走っている人ばかりなので誰かを追い越したり、また近い距離に誰かの背中を見ることは少なかったのだけど、今は様々な人がループを走っています。また歩いている人も沢山。暖かくなりダイエットに挑戦しようと、初めてこのループを訪れた人もきっと少なくないでしょう。汗でびっしょりのTシャツを着て大きく背中で息をしている人を追い越すこともあります。

思えば一年前の僕も、セントラルパークまでの300メートル程の距離を走るのに息を切らしていました。少しずつ連続して走ることの出来る距離を伸ばし、1キロ先のレザボア(ため池)まで、そしてついにレザボアを一周して5キロ程の距離を走りきり家まで帰って来た時は妻にどれほど自慢したことでしょうか。そうやって走る楽しさを憶えながら一年が経とうとしています。いまでは10キロ走ってもどこも痛くはならないし、ハーフマラソンの距離を走ってもその足で買い物に出かけられる程に、走ることが生活の一部になっています。こうして続けられたのはやはりセントラルパークが出来過ぎなくらい美しく、ランナーにとって最高の場所だったからだと思います。

セントラルパークは南北4キロ東西0.8キロに渡り拡がる緑地公園。約3,4 K㎡の面積を誇ります。パーク内をぐるりと一周出来る9.7キロの舗装道パークドライブは、ランナーにループと呼ばれています。これは皇居の周りの約2倍の距離。この他に走る人に開放された約6.8キロの乗馬道や、レザボアの周りに整備された一周2.5キロ程の土で固められたコースもあります。土は膝にもやさしく乗馬道は森の中を走っているような爽快さが味わえ、レザボアの周りではため池の水面に冷やされた心地よい風を感じながら、もう少しすると連なる八重桜が花を咲かせます。

以前東京でお世話になっている方に寿司をご馳走になりながらこう問われました。「今や東京は世界一の都市と言ってもいい。世界中から最高品質のものが集められ食やデザイン、どれをとっても高いレベルなのに何故君は東京を離れニューヨークにいるのかい?」郷土自慢大会を持ちかけられたのだと思いましたが、僕は東京も大好きだし議論はあまり盛り上がらなかったのです。でも今なら「ニューヨークにはセントラルパークがある。」この一点だけを持ってニューヨークが世界のどの街よりも素晴らしいという主張を展開すかもしれません。それくらいセントラルパークが好きです。

デスクワークが多く、ビルに囲まれて生活している都市生活者にとって、運動は食事と同じ生命活動。だから気持ちよく走ることができる場所があるというのは、交通機関が整備されているとか、美味しいレストランや品揃えの豊富なスーパーマーケットがあることと同様に、都市を評価するうえで大変重要な要素だと思います。実は現在東京に移り住むべく計画中。走る場所がどこにあるのか調べながら進めています。きっと東京でもいい場所を見つけます。

どこにいても走りたい。

長距離走者の孤独

R144 21.1km

photo

気がつけば一ヶ月以上更新が停まっていました。でもしっかり走っています。3月も後半、既にデイタイムセービング(夏時間)が始まり時計が1時間早まったこともあり、日も随分長くなりました。春めいた半袖で走れる気温8度程の日もありましたが、ここ数日は摂氏0度から3度位の寒い日が続いています。

いつも夜の7時半位から走り始めるのですが気温がマイナスになると、セントラルパークで走る人はめっきり減ります。逆に5度以上になると夜でも沢山の人が走っています。まちがいないです。北風と太陽の話を思い出します。人の行動は環境に正直に反応してしまうようです。僕はというとマイナス2-3度ならば走ります。それくらいの気温ならばタイツをはいて長袖のハーフジッパーを着て、あとは手袋があれば楽しく走れます。葉が落ちて枝だけになった木々のシルエットはきれいだし、見通しは良く、走っている人も少ないので冬の間もその時間を存分に楽しめました。もう少しの間冬のままでもいいと思うくらいです。

昨夜は前を行く人がいない、最後の冬の夜の公園を走りながら、10代の頃に読んだ「長距離走者の孤独」というイギリスの作家、アラン・シリトーの書いた小説のことを思い出していました。すっかり忘れていた遠い過去の記憶はひょんなことで思い出すものです。主人公は貧しい労働者の街で生まれ育った18才の少年で、強盗かなにかをして捕まり感化院に入れられるのだけど、足が速いことから感化院対向の長距離レースの代表に選ばれ、早朝、感化院の外を走りトレーニングすることを特別に許されるのです。少年は朝霧の中を走りながら「世界にはじめて生まれた裸の人間のようだ」と表現していたことを憶えています。結末の、社会の現実に大きな抵抗をもった少年の、ささやかな、そして大人をあざ笑うかのような行動にとても共感したことを憶えています。

それなのに、僕は今だれもいなくなった夜の公園を走りながら、無事平穏に一日が終わったことを確かめる「最後のひとり」のような気分で夜空を見上げています。子供は生まれてくる社会を選ぶことは出来ないのだから、反抗してその存在を示すことも許されます。すっかり大人を通り越した僕は今、その子供達のいる場所が希望があって夢中になることにあふれていて、嘘の無い世の中であるように願うのでした。

このところは距離を延ばして走っています。むしろトレーニングと呼んでもいいでしょう。なぜなら5月にブルックリンで行われるハーフマラソンに出場することにしたからです。昨年の夏からはセントラルパークのフルループ約10キロをひたすら走り、それ以上の距離を走ろうという気持ちにはならなかったのですが、ハーフマラソンを走るとなると、それなりにトレーニングして大丈夫だと思える状態で出場したいと思ってのことです。

前の投稿で紹介した小出監督の本『マラソンは毎日走っても完走できない 「ゆっくり」「速く」「長く」で目指す42・195キロ』にはハーフマラソンのトレーニング方法もレースの3ヶ月前から組み立てたメニューと共に紹介しています。そのとおりにはなかなか出来ないけど、少しでもそれに沿ったトレーニングにして無理なくゴールしたいと計画しています。

そんな訳で、いつもより多めにセントラルパークをぐるぐる回っております。

B00004YTVD.01.LZZZZZZZ

昨夜のDJ iTunes BestはJazzanovaUnited Future Organization。アシッドに刻むパーカッションと揺らいだエレクトリックピアノ、そしてワイルドな歌声が、夜の摩天楼に吸い込まれるよう。

 

 

新春初のセントラルパーク(永遠に消えない)

photo

R122 10k

新年明けましておめでとうございます。

氷点下4度の午前中、新春初のセントラルパークを10キロ走りました。走っていると汗を拭き、息を切らし、地面を蹴る「自分」は、どこまでも続いていくような実感として強くあります。でもその実感とは関係なく、それはとても不確実な未来予想にすぎないことも知っています。世の中では災害や事故や事件が、自分が想像出来る最悪なことをはるかに超える最悪さで起こっています。「ひどいニュース」はいつもパワーアップして最悪ぶりを更新し続けます。もちろんそれは自分が生まれてからの経験であって、歴史を見ればそれでも現代はよりよい世の中になってはいるのだとも思います。

コネティカット州ニュータウンの乱射事件の犠牲になった子供達は、突然未来へと続くはずの命を奪われました。交通事故や災害でも沢山の命が突然止められてしまっています。子供の頃はじめて人が死んで亡くなると知ったとき、とてつもない恐怖と悲しみに襲われて、布団をかぶり眠れずにいたことを憶えています。「いつかみんないなくなってしまう。」怖すぎます。虚しすぎます。少しだけ世の中と距離を置いてなるべく冷静に事態に対応出来るよう備えているのがよさそう。

大人になって今は少し違うアイディアを持っています。それは自分は次の瞬間に止まってしまうかも知れないけど、この世界はその後も続くし、今自分が存在している事実は、たとえそれを観測する人がいなくなったとしても無くならないというアイディアです。たとえ45億年後に地球が無くなってもそれは消えません。だってそう、あなたは確かにそこにいるでしょ。ね? そう考えると家族との時間も、他人との出会いも消えてしまうものは何一つ無いのです。大切な家族を失っても同じように考えられるかは分からないし、ご遺族に向かってそんな説法を解くつもりもないけど、とりあえず自分もいつかは消えてしまうという恐怖と虚しさは無くなります。

それに世界を終わりにしてやろうなんて考えるテロ行為や銃撃犯とは断固戦うし、世界を少しでも良くしたいし、災害や病にも最大限抵抗します。

これまでを振り返ると帳消しにしたいような経験も少なからずあるし、未熟だったと反省することも多くありますが、これから永遠に消えることの無い残りの時間を、大切な家族と共に、感謝しつつ精一杯使わせていただきます。

「明けましておめでとうございます。 」生きているということは明けるの連続。その連続をこれからも沢山の人と喜びあえたらと心から願います。

というわけで今年も走ります!

mzi.lyuhnxcu.170x170-75今日のiTunes Best は Condorkanki で Yungueñita 。サンポーニャは笛なのにパーカッションのように弾け縦笛ケーナは軽やかに、その音色は力強く雄大でそして演歌。アンデスの山々を駆けているよう。

 

 

 

R115 10k 初夏から冬の755キロ

早いもので12月も後半。クリスマスもまじかです。いつも走り始める自然史博物館の裏のコロンバスアベニューはもみの木売り場になっています。今年もここでツリーを購入して我が家はもみの木のいい香りがします。

思い立って走りはじめてから半年が過ぎ、走行距離も755キロになりました。木々が一斉に葉を出し花咲き誇る春が終わり、緑が深まる初夏、乗馬道に出来た木の葉のトンネルを潜り、レザボアまで息を切らしてようやくたどり着きました。夏には何百ものホタルの光が舞い、夏の終わりにはループの最北の坂を駆けながら、虫の鳴き声に囲まれました。大雨に降られてずぶ濡れのになりながらキンクスを聴きました。秋には黄色やオレンジに色づいたパークドライプは沢山の走る人達で賑わいました。そして冬、幹と枝だけになった木のシルエット越しに見るミッドタウンの明かりや寒空に浮かぶ月を眺めなら走ります。

実は、きっとこのように素晴らしいものになるだろうと走り始める時に予想していたのですが、半年が経過して生活の中にとても有意義な時間と空間がしっかりと出来上がりました。長く続けたいと思います。そのために永遠の命が欲しいところです。

タイムは9月の嵐の夜に走って体調を崩して以来延びていないのですが、足が痛くなることが少なくなりました。色々情報を集め試しています。最近は腹筋を意識して走っているのですが、そうすることで体をよりよくコントロールでき、着地のタイミングを遅くして足の裏や膝にかかる負担が軽減出来るようです。

バスケットボールやバレーの選手がジャンプして空中で止まっているように見えるのは、腹筋で体を制御しているからなのです。地面をなめるように走る感覚なのですが、これはマラソンなど長く走る場合には特に有効なフォームなのだそうです。

今夜のiTunes best は中島美嘉のAROMA。乾いたドラムを背景にしっとりとしたギターとエレクトリックピアノ、そして彼女の歌声がJazzyに絡み合い、軽〜くフィアットに乗ったルパン三世が去って行きそうな夜でした。

R108 6km セントラルパークに冬到来

11月最終日です。今月は月初にハリケーンが去ったと思いきや一気に気温が下がり8日には初雪&積雪を記録しました。ニューヨークマラソンが開催されるはずだった日を境に夜のセントラルパークを走る人もめっきり減っています。初めて走る冬。寒さの中で走るのは備えがいるもので最近になってようやく気温に合わせて上手く対策出来るようになりました。

気温5度くらいならば、ハーフジッパーの長袖トップスに下はランニング用のタイツ、そして軽めの手袋が快適です。汗が出るくらいに保つのが良いようで、体が暖まるにつれ少しずつハーフジッパーの襟元を開けて温度調節しています。気温0度近くまた風のある時はその上に風を通さないジャケットを着て、手袋も少し厚めにすると1時間走っても凍えることはありません。それから腰回りも冷えるのでタイツの上に短パンを履くと大事な部分も守られます。

これが分かるまでに何度も寒い思いをして体調を崩しました。おかげで今月の走行距離は80キロに達しませんでした。

でも慣れてくれば冬の公園を走るものいいもの。何が違うかというとそれは景色です。ニューヨークにある木々はそのほとんどが落葉樹。夏には鬱蒼とした葉っぱに覆われた木々の、その向こうにのぞく少しの空の下に延びるパークドライブを走っていましたが、紅葉が終わりすっかり木々の葉は落ちてしまい、どこもかしこも幹と枝だけになってしまいます。枝だけになった木のシルエットが澄んだ空を背景にきれいです。動物の進化の枝分かれを思い起こさせる神秘的な造形。そして見える空は広く、また遠くミッドタウンのビル群もよく見えます。夏には気がつかなかったけど、パークドライブ北部の坂道を下る時、崖の向こうには街が広がっています。

数日前、満月で澄み切った冬の夜空の下を走った時は、踏みしめるアスファルトが間違いなく地球の大地。宇宙に浮かんだ地球の大地を蹴り進んでいる実感があり、何度も遠くのビルの明かりや月や月の近くにあった木星を見ながら、その実感を踏みしめていました。

これからもっと寒くなり氷点下の日々、氷の世界のニューヨークが訪れますが、冬を走るコツが掴めてきたので、また走行距離やスピードを少しずつ増して冬を楽しみたい。

もっと走ろう!

休 「ハリケーン・サンディでも走る人達」

ハリケーン・サンディが接近しています。今東海岸を北上中でまもなくニュージャージーに上陸します。ニューヨーク市では28日夜より地下鉄とバス、鉄道に飛行機全てがストップしていて、今日29日は外に出ないようにと市長より指示があり、沿岸部の地域では避難命令が出ています。さらに現在マンハッタンに繋がる全ての橋とトンネルは封鎖されています。昨夜の時点ではまだ雨も風も無かったので走りに出たのですが、セントラルパークも既に閉鎖されていたのでやむなく公園の周りを3キロ程走りました。

今日も雨はそれほど降っていないのですが、満潮で高潮の上にハリケーンの低気圧で引き上げられた海が風で海岸線に打ちつけて沿岸部を水没させています。倒木が原因で停電の地域もあるようです。幸い僕の住むエリアは避難地域ではないのですが、木が倒れたり停電になる可能性は否定出来ないのでおとなしくしておいた方が良さそうです。

しかし、おとなしくしていない人たちがいました。お昼過ぎ、少しずつ雨風が強くなってきていましたが、黙々と走るランナーは少なくありません。公園には入れませんが、周囲の歩道は信号が少ないので走りやすいのです。所々に出来た水たまりをぴょんぴょん飛び越えながら楽しそうです。観察したところ、男女比は同じくらいで年齢は30代以上が殆どの印象でした。それなりの年齢にならないとちょとストイックな気分で自分を虐める快感は味わえないのかもしれません。

日本の台風では「雨漏りがしないか屋根の様子を見に行って転落して大怪我をした」とか、「海の様子を見に行って波にさらわれた」といったニュースを毎年のように耳にします。近年のジョギングブーム、「ちょっと走りにいって倒木の下敷きになった」なんてニュースを耳にするかもしれません。何しろ僕も走りたくてしかたありませんでした。でも先月嵐の夜に走って体調を崩したし、そこはぐっと我慢しました。ニューヨーク市長も「じっとしてなさい」と言ってたし。

ハリケーン一過を待って走るよ!

 

– 追記 −  一夜明けて

ハリケーン・サンディはアメリカ東部に甚大な被害をもたらしました。地下鉄の完全復旧には1週間かかるそうで、マンハッタンでもダウンタウンではまだ停電が続いています。昨夜はそれほど風の音がしなかったので、このあたりは被害は出ないだろうと感じていましたが、外へ出るとあちらこちらで巨木がなぎ倒されていました。上の写真はいつも僕が走り始める場所です。復旧に向けご尽力されている方々に感謝します。そして一日も早い復旧を祈ります。

 

R95 5.4km「旅先ワシントンDCを走る」

週末を利用して家族で秋のワシントンDCを訪れていました。乗り物と動物が大好きな息子に航空宇宙博物館でアポロ計画の月着陸船を見せたり、動物園のパンダに会ったり、スミソニアン博物館群や米国建国の歴史がうかがえる建造物を訪れるのは、まさに米国の首都ワシントンDC観光の醍醐味です。

でも密かに何よりも楽しみにしていたのは旅行先で走ることでした。どの街にもランナーはいて、それぞれの街のベストな場所には一番多くのランナーが集まり、毎日のように走るホームコースになっているはずです。そこを走ってその街の空気を感じれば、きっと忘れられない旅の思い出になります。

Nike+のウェブサイトによると、アーリントン墓地からポトマック川のアーリントン橋を渡りリンカーンモニュメントとその先のプールを一周する「モニュメントループ」と呼ばれるルートや、ポトマック川沿いのルート、そしてワシントン記念塔を中心としたナショナル・モールがこの街で人気の走る場所のようです。Nike+のウェブサイトでは、地図上に人気のルートが分かるHeat Map(走っている人が多い場所ほど赤くなる)を表示出来るので、どこに行っても走るルートを見つけられそうです。

ナショナルモールのすぐそばに宿泊していたので、モールの中を連邦議会議事堂の前まで行って、その後はワシントン記念塔まで走り、塔の周りを回って戻って来る5.4キロのルートを走りました。こちらがその記録です。

滞在最後の日曜の早朝6時半、外はまだ真っ暗。モールの周りには巨大な石の建築物が沢山あり、昼間は観光客でにぎわっていましたが、空が白む前の街の人影は、遠くを走るランナーだけです。モールの中には土がしかれた一直線の道があり、そこを議事堂まで走り池の周りを回って方向を変えました。ここはオバマさんが大統領の宣誓式をしたのが記憶に新しいですね。

そこから白んでくる空にそびえ立つワシントン記念塔まで2人のランナーとすれ違いました。記念塔をぐるりと回り独り占め、そしてプールの向こうにあるパルテノン神殿のようなリンカーン記念館を見るころには、アメリカ建国に立ち会ったような凄まじい錯覚を憶える程楽しい気分になっていました。走ったからこそ味わえる旅の醍醐味です。

リンカーン記念館は、1963年キング牧師がかの有名な I Have a Dream(私には夢がある)のスピーチをした場所です。1862年にリンカーンが奴隷解放宣言をしてから約100年が経過していました。あらゆる人々の平等と民主的自主政府の原則をうたった1776年のアメリカ独立宣言からは実に200年近くが経過していたことになります。

キング牧師のスピーチから50年後の現代。そしてさらに50年後の未来、この「あらゆる人々の平等と民主的自主政府」という素晴らしいアイディアが実現されることを願っています。

何を隠そう僕はアメリカ合衆国憲法が好きなのです。もっと走ろう!

R91 10km 「琳派とウォーホルとフェルメールとトーテンポール」

緒方乾山 Kanzan Ogata

すっかり涼しく、を通り越して肌寒くなってきました。日本に住んでいた頃は、秋は薄手のジャケットやウィンドブレーカーなどを着ている時期がわりと長かった気がしますが、ニューヨークは寒暖の差が激しいので昨日まで半袖だったのに今日はダウンジャケットが必要となるくらい寒くなることがあります。

昨日はコロンバスデーの休日。午後からメトロポリタン美術館に出かけました。いつも走っているパークドライブを横切って西側から東側の美術館まで歩きました。長袖を着て走っている人が多いようです。

今回美術館での目的は日本の『琳派展』と、アンディー・ウォーホルとアメリカの現代アート50年をたどる『Regarding Warhol: Sixty Artists Fifty Years』展、そして『フェルメール』を見ることでした。ところが館内に入って目的の場所から場所へ行くまでに、ローマ彫刻やエジプトのミイラなどの古代文明を通り抜け、ゴッホ、モネ、ゴーギャンといった名画を横切り、特設のフォト展をのぞき、最後にはアフリカやオセアニアのプリミティブアートにビックリする始末。

1日経った今も目眩がしています。メトロポリタン美術館へ行くとあらゆる種類のアートがあり、いかにこの美術館が古代から現代まで全世界を網羅し、時空を超えて人類が生み出すアートを大切にしているかが分かります。つまりそれは人間に対する深い尊敬。それゆえに種類の多さに圧倒されてしまうので、一つの世界感を味わうならば心して行く必要があります。いつもついつい欲張ってしまうので、次回は目眩がしないよう、他には目もくれず目的に向かい、じっくり鑑賞したら速やかに退館します。琳派展はもう一度見ておきたい。

という訳でちょっと食い合わせの悪い美術鑑賞をしてしまったようで、その後いつものようにパークを走りながら光琳やバーバラクルーガーやウォーホルが消化しきれないまま頭の中でぐるぐる回っていました。今もまだ回っている。最近はまた10キロ走るようになりすっかり調子を取り戻しています。昨日はこんな感じ。そうそう、気温12度だと半袖でも汗をかきますね。

もっと走るよー!

 

休「ランナーズ天国」

日曜の今日、セントラルパーク沿いより1ブロック西の、コロンバス・アベニューでストリートフェアが開催されていました。ストリートフェアとは歩行者天国になった車道に屋台やマーケットが並び、コンサートなども行わるちょっとしたお祭りです。ニューヨークでは春から秋にかけて各所で催されます。今日はお昼前から家族でこのストリートフェアを少し見物してご飯を買い込み、午後のセントラルパークで食べることにしました。

ところで「歩行者天国」っていつ誰が考えた言葉なんでしょうね。ググってみる気はサラサラありませんが、普段どれだけ「歩行者地獄」なのかってことで排ガスを撒き散らす車が道を埋め尽くす高度成長期を想像してしまいます。それに「地獄」が名物の別府で生まれた僕には親近感があり、ノスタルジックでいいネーミングだと思います。

セントラルパークに72番通りから入りストロベリーフィールズを通って、いつも走っているパークドライブをしばらく歩き、シープメドーが見える辺りのベンチで先ほど買ったご飯を食べることにしました。ここで走る人を見ながら食べたかったのです。

その前に、パークドライブを歩いてみたらいつも走っている風景とは全く違って見えてちょっと戸惑いました。休日の午後で人が沢山いるのはもちろんですが、歩いている分、景色はゆっくり動くので目に入る範囲も広いのです。フェンスの形や歩道の縁石のつなぎ目とか、木の根っことか落ち葉とか、歩く人の表情とか子供が転んだとか。やっぱり一度歩いて一周するのも良いかもしれません。

彼岸も過ぎて涼しくさわやかな秋晴れの午後、僕と妻はカレーを、息子にはマカロニチーズを食べさせながら走る人見物です。やっぱりいいです。走る人はみんなきれいです。でも速そうな人の走り方は 特にきれいです。すぐに分かります。滑らかにそして大きく足が回転して、腕の振りも力強くそれでいて肩の力は抜けている感じ。体もブレずに左右対称、すーっと走り抜けていきます。長距離の場合は加速するのではなく一定のスピードを維持しながら走るのでフォームも一定のサイクルでリズム良く動きます。これは見ているより走りたい気分になります。

去年の今頃も歩きはじめた息子とこのあたりをよく散歩しました。そのころは走っている人を見ても「よく走るよな。」「元気いいな。」と感心はしていましたがそれ以上の興味はありませんでした。

今、目の前の「ランナーズ天国」に気がついて、僕はとてもラッキーだと思います。

さあ走ろう!

 

R84 8.8km 「ストーム」

空を見てなんとか行けるんじゃないかと家を出ましたが5キロに差し掛かる前にやっぱり雨。でもiPhoneは念のためジプロックに入れてきたし、ヘッドフォンは水洗いが出来ると宣伝しているモノなので安心です。周りのランナーも何事もないようにもくもくと走っています。

ところが雨脚はどんどん強くなるばかり。でもなんか気分がいい。周りの人たちも同じ気分だったのか、奇声を発する人や、”Are you feeling it? Yeah!”と大声で共感し合っている集団もいます。これは随分とおかしなところに足を踏み入れようとしているような。でも気分がいい。おもわずYeah!と叫んでしまいそうなくらい。

そのうち車ならワイパーをフル稼働しても前が見えないくらいのストームになってしまい、今月は毎日の走行距離のグラフの高さを10kmできれいに揃えたかったのですが、とにかくそこから最短で帰れるルートで帰ってきました。急に降ったせいでところどころ水没している場所もあり危険。嵐のセントラルパークはちょっと無茶です。

そんな無茶な嵐の夜、ギターも歌も下手カッコいい60年代のイギリスのロックバンド The KinksI Need You がぴったりでした。こちらで試聴出来ます。

もっと走りたい!

 

 

R79 10km 「空のメッセージ」

3日間走ることが出来なかったので足の疲れが抜けていて、今日はいつもより少し速く走ることが出来ました。こちらが今日の記録です。走りはじめた7時半頃にはすっかり日は落ちていて、セントラルパーク内では街灯だけが足下を照らしてくれます。それでも走る人や自転車に乗る人は沢山いて、さながら夜の部活動です。今日は何も考えずにただ走っていました。ただ街灯に照らされたパークドライブが緩やかにカーブしていくのを見ていたり、背の高い木々の葉に覆われたその先にある、街の明かりを受けた少し青白い空を見上げたりしていました。

ループの最北端を回りきり南に向かい坂を上りきる頃、いつものように虫の声に包まれます。今日はそこでヘッドフォンを外し、自分の息と、足音と、虫の声だけを聴いて走っていました。木々の上にある南の空には二筋の青白い明かりが真っすぐに天へと伸びていました。今日はあの日9.11から11年目になります。崩壊した2つのビルがあった場所から追悼の光が天へと放たれているのです。

今日は晴天でした。ニューヨークの秋の空の色はとても青く、その青さはどこまでも高いところにあります。なにも言わない静かな青い空。世界を変えたと言われるあの日9.11の空も今日と同じような青でした。ビルが崩壊し、米戦闘機がマンハッタンの空域を横切り、島が封鎖され、帰宅難民がストリートを大移動している時も、あの青い空はただ静かにそこにあったのです。

福島で起きた原発事故の収束にあたっていた作業員が、「空の青さに涙が出た。」とインタビューに答えていたのをテレビで見ました。有事にあっては同じように感じる人は少なくないようです。私たちの生きている時間とこの空を動かす宇宙の時間との間には、あまりに大きなスケールの差があって言葉を交わすことが出来ません。たけど私たちは確かにこの空の下にます。

犠牲者のご冥福を心よりお祈りします。


R75 10km「夏の終わり」

今日9月の第一週目の月曜日はレイバー・デー(Labor Day)のため休日です。ニューヨークではこの日を境に夏が終わります。といっても日本で「盆を過ぎた海にはクラゲが出る」というのと同じような、季節の移り変わりを象徴する節目なのです。そんなわけで休日の今日はいつもよりも早くパークへと走り出しました。そこで「はっ」としたのは、背の高いシュガーノルウェイ・メイプルの木の葉が、すっかり黄色に変わり既にパークドライブの落ち葉となっていたことでした。少しずつ夏の終わりは感じていたけど昨日までは気がつかなかったから、一日の間に様変わりしたに違いありません。まるでカレンダーどうりに季節が流れて行くことに少し寂しさを憶えます。もう戻らない夏が過ぎて行く。45回も過ぎて行く。

夕方から雲が低く雨に降られるかもしれないと、iPhoneを防水できるZIPLOCを準備したのですが、幸い降らずに気温も快適で、初めて1キロ5分30秒のペースで10キロのフルループを走ることが出来ました。休日だけあって、ベビーカーを押して走るカップルや沢山のランナーがいます。ところでいつものNike+Running Appは、登録すると自分と同じルートを走っている他のランナーのタイムや走行回数、自分との比較が出来ます。このAppを含めいくつかあるNike+のギアを使っている人で登録した人に限りますが、それを見るとなんと一番速い人は平均1キロ2分15秒のペースで回っています。ということは一周23分弱。これはプロ以外の何者でもないでしょう。あるいは自転車なのか?このペースでマラソン走ったら世界新だし。。。実際、僕が全速力でも明らかに追いつけないスピードで追い抜かれ、あっという間に遠くに消えていくランナーは沢山います。平均1キロ5分30秒のペースで走った僕は1241番目にランクインです。同じAppを使って登録した人の中で僕より速く走る人が1240人いるってことは、このセントラルパークで走っている人はいったい何人いるのでしょう。

地面を蹴る感覚が好きです。疲れてくるとただ足を持ち上げているだけになってペースも落ちるのですが、この10キロを最後までグングン蹴って走れるようになりたいっと思いはじめました。

もっと走ろう!